コエーリョ 2冊目

この小説は、社会生活で自信を失った人、あるいは送ることが困難になった人たちのことが描かれている。しかし、精神病院という閉鎖空間では、自他ともに狂人だと認識しているため、人に見られることなんかどうでもよくなり、何の支障もなく生活を送れている。要は、我々が作り上げた「普通」という固定観念が悪玉なのだ。自分は特殊な人間だ、何かがおかしい、という妄想が結果的に自分の殻に閉じこもってしまい、収集のつかない事態に陥らせているのだ。人間の心なんて人それぞれなのだから、特殊だという感覚はむしろおかしい。精神病はおそらく、「人は人、自分は自分」と悟るかが重要なのだろうと、本を読んで思った。
しかし、心の病気の境界線なんて分からないものだ。自分で狂人のように振る舞えば、周りから「おかしい人だ」と思われることだし。結局、自分自身でしか解決できないから厄介なのだろう。

ベロニカは死ぬことにした (角川文庫)

ベロニカは死ぬことにした (角川文庫)